小児皮膚科
お子様の肌は
デリケート
お子様の肌は、まだ発達途中にあるため、大人に比べてとてもデリケートですし、免疫機能も不完全なので、特別な配慮を要します。
また、お子様特有の皮膚症状も少なくありません。しっかりと診察した上で、お一人お一人に合った適切な診療を行います。
小さなお子様は、自分の症状をうまく言葉で伝えられないことが少なくありません。そのため、気づいた時には、ひどい状態になっているケースもしばしばです。
近くにいる大人が、お子様の皮膚の変化に気づきましたら、早めに相談にいらしてください。
また、当院ではお子様のデリケートな肌にあわせたスキンケアを丁寧にご指導いたします。適切なスキンケアで、お子様の肌を外的な原因からしっかり守ってあげることがとても大切です。
お子様の代表的な
皮膚疾患
あせも
あせも(汗疹)とは、汗をたくさんかいた後に、皮膚に細かい水ぶくれやブツブツが現れる皮膚疾患のことです。
汗をかきやすい夏に多く、小児に発症しやすい疾患です。
高熱を出している方や高温の環境下で作業している人にも見られます。
あせもは、症状の違いから大きく3種類に分けられます。
小さな白っぽい水ぶくれができる水晶様汗疹、赤い丘疹が生じ、かゆみや軽い痛みを伴う紅色汗疹(こうしょくかんしん)、皮膚が部分的に盛り上がって、その部分が汗をかけなくなる深在性汗疹の3種類です。深在性汗疹は亜熱帯地方に多く、日本ではあまり見られません。
あせも(汗疹)の原因
多量の汗をかき、汗管(汗を出す管)が詰まるために、汗が皮膚の外に出られなくなり、皮膚内の組織に漏れ出ます。すると水ぶくれができたり、炎症を起こしてかゆくなったり、赤くてかゆいブツブツができたりするのです。
あせもの治療
水晶様汗疹は特別な治療を行わなくても2~3日で症状が治まります。紅色汗疹にはステロイド外用薬を使用します。細菌感染が加わっている場合は、抗生剤を用いることもあります。
あせもの再発を繰り返さないためには、汗が出たらシャワーで流すか、こまめに拭き取るように心がけることが大切です。
とびひ
とびひは、正式には「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」と称し、皮膚への細菌感染によって発症し、人から人へとうつる疾患です。またタオルや寝具などを介してうつることもあります。特にアトピー性皮膚炎の患者様は、皮膚のバリア機能が低下しているため、とびひにかかりやすいので注意が必要です。
掻きむしった手を介して、水ぶくれがあっという間に全身へと広がる様子が、火事の火の粉が飛び火するのに似ているため、「とびひ」と呼ばれます。
とびひには、水ぶくれが生じる水疱性膿痂疹(すいほうせいのうかしん)と、かさぶたができる痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)の2種類があり、それぞれの特徴は下記のとおりです。
水疱性膿痂疹
皮膚にできた水ぶくれが、だんだん膿をもつようになり、やがて破れると皮膚がめくれてただれてしまいます。かゆみがあり、そこを掻いた手でほかの場所を触ると、症状が体のあちこちに広がってしまいます。
とびひの多くはこのタイプで、主な原因は黄色ブドウ球菌です。
痂皮性膿痂疹
皮膚の一部に膿をもった水ぶくれ(膿疱)が生じ、厚いかさぶたになります。炎症が強く、リンパ節が腫れたり、発熱やのどの痛みを伴ったりすることもあります。
主に溶連菌の一種のA群β溶血性連鎖球菌が原因となりますが、黄色ブドウ球菌も同時に感染しているケースが少なくありません。
とびひの治療
とびひの治療には、主に抗菌薬の内服や外用を使い、細菌を退治します。
必要に応じて、抗アレルギー薬の内服、亜鉛華軟膏(あえんかなんこう)やステロイド剤の外用なども行い、かゆみや炎症を抑えます。
また石鹸での洗浄も大切ですので、親御さんに適切な洗浄方法をご指導いたします。
とびひは、あちことにとんでひどくなる前に治療を始めることが大切です。
水いぼ
水いぼは、正式には伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)と言い、伝染性軟属腫ウイルスによる皮膚感染症です。
幼少児によく見られ、かゆみを伴うことが少なくありません。
特に乾燥肌やアトピー性皮膚炎のある患者様に多く見られます。その理由としては、乾燥肌やアトピー性皮膚炎があると、皮膚のバリア機能が低下するため、細かいキズからウイルスが入り込みやすいことと、かゆみで引っ掻くことにより爪先からうつってしまうことなどが考えられます。
プールでよく感染しますが、水から感染するというよりも、皮膚の接触やビート板の共有が感染の原因となるようです。
水いぼの治療
専用のピンセットで一つずつ摘まんで内容物を出す方法が一般的です。
ただし、痛みを伴いますので、この痛みを軽くする目的で麻酔のテープ(ペンレステープ)の前処置をお勧めしています。麻酔のテープを使用する場合は、貼ってから効果を発揮するまで1~2時間必要ですので、受診時にすぐ水いぼの摘除ができませんのでご了承ください。
アトピー性皮膚炎(小児)
小児のアトピー性皮膚炎の特徴は、その経過で乳児期からの食物アレルギーを伴うお子様が多いということです。乳児期から肌が弱く、皮膚の治療が必要であるアトピー性皮膚炎のお子様の約6割は、血液検査をすれば5大食物アレルゲンのどれかに陽性を示すと言われます。実際、乳児期のお子様に皮膚炎を認めると、離乳食のアレルギーが皮膚炎の直接的な原因なのでは、とご心配になり受診される保護者の方も多いです。また実際に特定の食物を与えるとかゆがることが多い、などと訴えられる保護者の方もいらっしゃいます。
昔は皮膚炎を抑える目的で積極的にお子様の食物除去を行っていた時期もありましたが、現在ではアナフィラキシーなど重篤な症状を起こす食物を除いて、食物除去は慎重に行われる傾向にあります。なぜなら乳児期に発症した食物アレルギーが成長と共に自然緩解(耐性獲得)することが多いからです。5大食物アレルゲンでも、調理方法の工夫や摂食量の調節で、皮膚の状態を見ながら摂取を続け、自然緩解していくことが可能であります(患者様によっては激しいアナフィラキシー症状を呈することがありますので、重症な患者様は小児科専門医指導の下での摂食管理が不可欠です。ご注意ください)。
また、この食物アレルギーは実は口から食物を摂取して成立するだけではなく、乾燥して弱くなったり、皮膚炎を伴う皮膚を介しても成立することが知られています。食物アレルギーが原因で皮膚炎は悪化することがありますが、その食物アレルギーが皮膚炎を介して発症するという複雑な病態が背景にあるのです。
当院では皮膚炎のお子様で、アレルギー疾患の合併やアレルギーの家族歴のある方は、詳細な問診や、皮膚症状の丁寧な診察を行ったうえで、アトピー性皮膚炎の診断をいたします。そして、まず適切な外用療法を指導させていただきます。具体的にはステロイド剤、免疫抑制剤、保湿剤、保護剤の外用と抗アレルギー剤の内服を行います。皮膚を守る機能、バリア機能を高める外用療法を行うことで、アレルギーの程度をより軽度に抑えることが可能だからです。炎症が無く、守る機能が高い皮膚を上手に保つことで、何もしなければ重症化していた皮膚炎の程度を軽症に抑えることが出来るのが、小児のアトピー性皮膚炎の特徴です。そのため乳児期からの早めの専門的な治療がとても効果的です。お子様に皮膚炎を認めた場合は、このようなことからも早めに皮膚科専門医を受診することをお勧めします。
ところで、アトピー性皮膚炎の治療にあたり、ステロイドの塗り薬に抵抗感をお持ちの保護者の方が少なくありませんが、当院では、症状に応じて必要な量を必要な期間だけ使い、症状が軽くなったら薬を減らしたり、弱いものに変えたりするように指導させていただきます。そしてお肌の状態が良くなりステロイドの塗り薬を使わない場合でも、保湿剤、保護剤でスキンケアを続けることが大切になります。
おむつかぶれ、皮膚カンジダ症
尿や便に含まれるアンモニアや酵素などに皮膚が刺激され、おむつの当たるところに赤いブツブツやただれが生じます。ただし、おむつの中にできる皮膚症状がすべておむつかぶれではなく、皮膚の常在真菌のカンジダが増えて皮膚病変をつくる、皮膚カンジダ症の場合もあります。当院では皮膚の角質を一部採取し顕微鏡で確認することで、どちらか鑑別しています。
おむつかぶれの際は、適切な洗浄方法の指導をさせていただき、亜鉛華軟膏やワセリンを外用します。症状がひどいような場合には、弱いステロイド軟膏を外用します。皮膚カンジダ症の場合は抗真菌剤の外用を行います。
いぼ(ウイルス性疣贅(ゆうぜい))
皮膚科ページの「いぼ」をご参照ください。